
ロシアの一流フィギュアスケーター達はここ最近、中国でマジック・オン・アイスのショーに出演している。
シェルバコワ、トゥルソワ、ザギトワ(そしてその他大勢)などトップ選手達は北京に到着した。中国市場の開拓はどのように進んでいるのだろうか?そして、フィギュアスケーター達はショーだけでお金を稼ぐことができるのだろうか?我々が計算し、調査していく。
あのフィギュアスケーターはどのようにして中国に興味を持つようになったのか?この市場は、連盟、ナフカ、プルシェンコが分け合っている。
マジック・オン・アイスは、中国の有名なペアスケーター、龐清(パン・チン)と佟健(トン・ジェン)による新しいプロジェクトだ。2度の世界チャンピオンに輝いた彼らは、母国のフィギュアスケートの発展にとても尽力しており、将来有望な選手を支援する財団を設立している。
しかし、彼らの大事な夢は、これまで国内で発展してこなかったアイスショーに、中国人が慣れるようにすることだ。
大きな音を立てて始まった。
現地のスケーター達に加えて、アナスタシア・ミシナとアレクサンドル・ガリャモフ、ビクトリア・シニツィナとニキータ・カツァラポフそしてマルク・コンドラチュクなど、前回のオリンピックチームのほぼ全選手が招待された。足りていないのはカミラ・ワリエワだけがだが、彼女は当初、主催者側の申請に含まれていた。しかし実は、すぐにそれはなくなった。発表の翌日に申請リストは修正され、カミラは中国で発表されず姿を消した。
もしかしたら、いなくなった理由は、間違いがあったということかもしれない。ワリエワのツアー参加は最初から予想されていなかったのかもしれないのだ。あるいは、CAS審問の後すぐにカミラが出演するということに全ての人が理解を示していたわけではなかったので、中国のSNSでの否定的なコメントに主催者が素早く反応したからかもしれない。
ショーのトップラインナップはアンナ・シェルバコワとアレクサンドラ・トゥルソワ(中国での人気という点では、この2人に匹敵するロシアのスケーターはいない)だったが、メンバーはピョートル・グメンニク、アリーナ・ザギトワ、アリーナ・ゴルバチョワなども含めて構成されていた。
主催者によると、参加者はロシア・フィギュアスケート連盟と共同で選出された。なるほど、今となっては、アレクサンドル・コーガン氏の8月の訪中目的がより理解できる。
ショーは10月1日から3日まで、北京オリンピックが行われたアイスリンクで3夜連続で開催される。ただし、通常のフィギュアスケートリンクではなく、2022年2月にスピードスケートの試合が行われた「アイスリボン」で行われる。チケットの価格帯は幅広く、3千ルーブルから3万3千ルーブルまでだ。ちなみに、一番高価なVIP席の売れ行きは最も悪かった。スケーター達との写真撮影ができるという得点があったにも関わらずだ。
ツアーには良い時期が選ばれた。現在中国では伝統的な秋の祭日を祝っており、国内では1週間休みが続くため、地元向けのエキゾチックなアイスショーに観客を集めやすいのだ。
しかし、主催者側は、隣の施設で開催されているチャイナ・オープン・テニス・トーナメントのせいで、好調な売れ行きが妨げられたと言っている。というのも、テニスは伝統的に中国人に人気があるスポーツだからだ。そのため、アイスリボンのスタンドはせいぜい半分ほどしか埋まっていない。ロシアのフィギュアスケートのプロモーションには、まだまだ努力が必要だ。
北京では、我々のスケーターが新しいナンバーを披露し、その多くがロシアのヒット曲だった。アレクサンドラ・トゥルソワは「カッコウ」を、マルク・コンドラチュクは 「ムミートローリ」を、ピョートル・グメンニクはラムシュタインの「Sonne」のロシア語カバーバージョンを滑った。
そして、アリーナ・ザギトワは受け入れてくれた人々にお辞儀をした。彼女は「LOVERS」のサウンドトラックでダニイル・グレイへンガウスの新作を滑った。
ショーを締めくくったのはアンナ・シェルバコワで(これは常にステータスの指標となる)、彼女もまた、マドンナの「フローズン」に合わせた新しいエキシビションを持っていて、ショーの広告キャンペーンの全CMの最初の1本にも出演している。しかし、中国の観客への挨拶はロシアから参加した者全員によって録音された。これはザギトワが英語を話すのを聞く貴重なチャンスだ。
アレクサンドル・コーガン、アントン・シハルリドゼから、主任医師のアレクサンドル・オゼロフまで、我々側の連盟のトップは全員、今北京にいる。チャンネル・ワンのチームもテレビ版の撮影のためにやってきたため、放送は後でロシアでも見られるだろう。そのアプローチは真剣なものであり、単なるツアーというよりも、ロシア人フィギュアスケート選手の出場禁止を背景とした将来への有望な共同事業のようだ。
春には、同様の代表団がモンゴルでショーを行ったが、中国のポテンシャルに匹敵するような市場はほとんどない。ロシア側の関係者らはこのことをよく理解している。
タチアナ・ナフカも、連盟の代表たちに遅れをとってはいない。彼女は11月に中国でのショーを予定しているが、日程と場所はまだ明らかにされていない。ナフカ・ショーがどのような演目を見せてくれるのかは不明だが、彼女が新しい市場での地位を譲る準備ができていないことは明らかだ。
「私たちは自分達のスケートを国際的に広める努力をしているの!ナフカ・ショーは、世界の観客を驚かせ、魅了する何かを持っているわ」とタチアナはソーシャル・ネットワークで事前に宣言している。
エフゲニー・プルシェンコもまた、楽観的ではあるが真の実業家として、ツアーだけに限定するつもりはない。しかも、プルシェンコは夏に中国でショーを行い、現在は中国にアカデミーの分校を開くために動いている。
メドベージェワもまたビジネスに取り組んでいる。今のところショーはまだだが、自動車メーカーと契約中だ。
エフゲニア・メドベージェワもツアーのロシア選手達と同時に中国を訪れた。彼女の計画には、中国の3つの大都市でのマスタークラスが含まれている。
サイン会への参加費は5千ルーブルで、個別ミートは1万1千ルーブルだ。北京では、価格が20万ルーブル以上にもなる5日間の大規模なトレーニングキャンプの一環としてマスタークラスが開催される。プログラムには、ロシアの振付師やスケーターによるクラスも含まれているが、一番の目玉は、もちろんメドベージェワと一緒に練習できることだ。
8月に行われたトゥルソワのマスタークラスも同じような値段だった。しかし、そこではレッスンは1回だけだったが、VIPパッケージにはホテルの宿泊と、アレクサンドラと共に中国にやってきたエフゲニー・プルシェンコのショーのチケットも含まれていた。


「ロシアフィギュアスケート界の女王の果てしない魅力」(発表文より引用)をアシストするのは、もうひとりのフィギュアスケーター、アナスタシア・グリャコワだ。しかし、宣伝ポスターでは、彼女はヨーロッパチャンピオンと記載されている。主催者はどうやら、彼女を2019年のヨーロッパ選手権で優勝したソフィア・サモドゥロワと混同しているようだ。
メドベージェワは出発の前に、中国の自動車会社Jetourとの提携を発表した。彼女は現在、このブランドの若者向けクロスオーバーのアンバサダーである。なぜエフゲニアがこのブランドの顔に選ばれたのかと尋ねると、同社は「私たちは、成功への意欲と、前進への動き、どんな障害も乗り越える準備ができているということによって、結びついています。」と、ほとんど宣伝文句のような答えを返してきた。
メドベージェワの前にしっかりとした自動車会社との契約を持っていたのは、アンナ・シェルバコワだけだった。既に1年、彼女は中国のブランドOmodaの顔を務めていた。ロシアの2人のトップ・フィギュア・スケーターは、伝統的に男性向けである広告の対象となり、中国におけるフィギュア・スケート人気の高まりを収益化することに成功した。
シェルバコワの中国での本格的な契約は自動車業界にとどまらず、夏には大手エレクトロニクス・ブランドTCLの顔になった。
彼女の中国のスポンサー獲得への道が、現地のSNSでのシャンプーの広告から始まったことを思い出せば、中国市場への賭けが正当なものであったことは明らかである。
「ショッピングモールでエスカレーターを止めなければならなかった。」 中国のレジェンド、陳 露(チェン・ルー)が語る中国でのシェルバコワ人気の絶大さ
我々は、1995年の世界チャンピオンであり、2度のオリンピック銅メダリスト(1994年と1998年)である陳露(チェン・ルー)に連絡を取った。チェンは中国人にとって伝説的な存在で、影響力と権威という点では、地元の有名な温室でさえ彼女に及ばない。ロシア側の関係者と知り合ったことで、彼女はロシアのフィギュアスケートのファッションにも関わっている。
「夫と私(ルーは、1992年オリンピックでエレナ・ベチケとペアで銀メダルを獲得したデニス・ペトロフと結婚している。Sports.ru)は、中国にフィギュアスケートアカデミーを持ち、北京から上海まで4つのリンクで活動しています。今年の夏、私の名前で大会を開催することを決めた。そしてすぐに、アンナ・シェルバコワを主賓として大会に招待するのが夢だと言ったの。」
ロシアの連盟とは長い付き合いなので、アントン・シハルリドゼに連絡を取り、ロシアのフィギュアスケートを代表して、アンナが来るのを許可してくれるよう頼んだわ。」
「そして全てがうまくいった。シェルバコワには自由な時間があって、私たちは大きな関心を持っている。私たちは、彼女がまだ見たことのない中国を見せたかったの。オリンピックでは選手村の外に出ることはなかったから。」
なぜアーニャを選んだのですか?
「シェルバコワは、間違いなく中国で最も人気のあるロシア人フィギュアスケート選手よ。彼女はとても控えめだから、そのことを十分に理解していないと思う。でも、私はその人気をよく理解してる。だから彼女が必要だったの。
1年半前、中国は初の冬季オリンピックを開催し、国内の人々にウィンタースポーツを紹介した。わが国ではウィンタースポーツの人気は夏のスポーツに負けるけど、本国での大会はその役目をしっかり果たした。旧正月の祝賀行事と重なったこともあって、全国民が競技を観戦したわ。旧正月は国の主要な祝日だけど、コロナ渦で人々はどこにも出かけられず、家でテレビを見ていたの。
そして多くの人々がフィギュアスケートに夢中になった!何よりも3人のロシア人女子スケーターに!アーニャ、サーシャ、カミラは、中国大会で最も人気のあった外国人選手だったと言えるわ。誰に聞いても、誰もがまずロシアの「マトリョーシカたち」を思い出すでしょう。」
ビデオで見る限り、シェルバコワは本物のロックスターのように中国で迎えられていますね。
「そう、アンナには多くのファンがいて、とても愛されてるの。プラカードや花束を持って、他の都市からも彼女のパフォーマンスを身に来たわ。空港での騒ぎを恐れて、私たちは彼女がどの便で来るかさえ言わなかった。結局、朝から大勢のファンが集まって、ロシア便を全部チェックしたわ。
そして公演には数千人もの観客が集まったわ。200人以上の警備員が警備を担当したけど、それでもこれほど多くの人が集まるとは予想してなかった。これはショッピングセンター内のスケートリンクだったの。だから、アーニャを見に来た人々の流れをどうにか調整するために、エスカレーターの一部を止めなければならなかった。」
「アーニャがとても気が付く礼儀正しい女の子だってことを言わずにはいられないわ。彼女は誰に対してもサインを拒まず、誰とでも気さくに話し、この訪中をとてもプロフェッショナルな態度で過ごしてくれた。ちなみに、彼女はもらったぬいぐるみを孤児院に贈ってほしいと私に頼んできたのよ。」
シェルバコワ自身に聞いた。彼女にとって中国とは?
アンナ・シェルバコワは、中国国民との関係についてSports.ruに語った。
「中国を訪れるのはこれで4回目ですが、私はまだこの国のことを知り、学んでいます。中国へ来るときはいつもフィギュアスケートに関連していて、ここでは常に忙しいスケジュールをこなしています。仕事ではなく、観光で中国を訪れ、豊かな歴史を持つこの巨大で素晴らしい国のことを本当に知りたいんです。今のところは、中国人のホスピタリティと親しみやすさ、そして高層ビルの多さしか挙げられないので。」
ここでは本当のスターだと思うけど、それには慣れてきた?
「このような注目の的であることに慣れるのは不可能だと思います。毎回心の奥から感激するんです。でも、それは嬉しいだけでなく、大きな責任でもあります。このような注目で、本番前の緊張が常に高まるのですが、その後、すべての感情が何倍にもなるんです。そしてそういうものは、最も素晴らしくて忘れられない瞬間ですね。」
中華料理で好きになったものはあった?
「前回の訪問で、陳露氏は中華料理を詳しく教えてくれました。深圳ではこれまでの人生で知っている数よりも沢山の新しい料理を試してみました。水晶エビ餃子と、エビ焼売が私のお気に入りでした。簡単に言うと、エビの入っているペリメニに似ています。テレグラムにそのことを書いたら、翌日、何人かの中国人ファンが同じレストランに来て、まさに同じ料理を注文したんです。彼らも気に入ってくれてたらいいなと思います。」
陳露はあなたが生まれるよりも前に演技をしていたけど、彼女のプログラムは見たことがある?それと、今の中国のフィギュアスケートは見てる?
「もちろん!子供の頃からいろいろな年代のスケートを見るのが好きでした。それに小さい頃は、金博洋(ボーヤン・ジン)選手を応援していました。彼が初めて4回転ルッツを跳んだときは本当に感動的で、スケーターたちはみんなその動画を何度も見て色々話していました。そしてもちろん、随文静(ウェンジン・スイ)選手と韓聰(ツォン・ハン)選手に感銘を受けずにはいられません。彼らのスポーツキャリアは素晴らしいものです。」


陳露氏は中国に巨大なアイスアカデミーを持っているね。君はコーチの勉強をしているけど同じようなものを開きたい?
「まだ1年目が終わったばかりなので、その話をするには早すぎます。正直なところ、コーチになるためにどれだけ多くの事を知る必要があるのか、それまでは理解していませんでした。
何かをする方法を知っていても、それを人に教える方法を知っているとは限りません。特に最高の成果を上げるスポーツに関しては。可能性としては、もちろんとても面白いことです。しかし、キャリアを終えた後、コーチになるか、まったく別の仕事を選ぶか、どちらに興味があるのかは今日の時点ではまだ答えられません。どちらの場合も学ぶべきことがたくさんあります。」
新たに何かを学ぶことを考えてる?
今は、いろいろなプロジェクトへの参加と勉強に時間を費やしています。私にとっては重要なことだからです。どの分野で学び続けたいかはまだわからないですね。その選択は完全に自覚的なものでないといけないですし、将来の仕事に役立つものでなければなりません。」
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シェルバコワの中国人観客との関係を構築する能力は、ある一つのエピソードによく表れている。アンナは北京の空港で、中国のファンから誕生日に贈られた私物のスニーカーを履いて、出迎えてくれたファンの元へ歩いていったのだ。
陳露との会話に戻ろう。トゥトベリーゼが中国の女子フィギュアスケート選手達にコーチのオファーを受けていたことが判明した!
シェルバコワについての話を続けましょう。最近、アーニャとあなたの娘アナスタシアのツーショット写真を公開したかと思いますが、彼女たちが長い付き合いであることが見て取れますね。
「ええ。2019年の夏、娘と私はモスクワに来た。彼女はアマチュアレベルだけど、フィギュアスケートをやってるの。そして彼女は、アーニャと一緒に写真を撮れることを喜んでたわ。そして、今度もまた同じように写真を撮ることにしたの。」
私はその時、エテリ・トゥトベリーゼと、ある女子選手のために、「クリスタル」でのトレーニングの可能性を相談しに来たのだけど、コロナ渦で計画が中断になった。私達は、自国開催のオリンピックへの準備だけでなく、長期的な協力も目指していた。トゥトベリーゼの下でのインターンを定期的にしたいと考えていたの。
今でも私達はこの考えを諦めてはいないけど、コロナ渦の後に再び始めるのは非常に難しい。でも、私は以前と同じく、中国がフィギュアスケートにおいてロシアから学ぶことがたくさんあると確信しているわ。我々のフィギュアスケーター達が最高の人達の下で練習に取り組めるよう、あらゆることをする。
貴国(ロシア)のフィギュアスケーターにとって、今は簡単な状況じゃない。でも、私はスポーツが政治と結びついてはならないと信じているから、あなた方がすぐに国際的な競技に出場できるようになることを願っている。スケーターの人生は短く、1シーズンでも欠場することは致命的。特に女子スケートの場合、オリンピックサイクルはせいぜい1回しかない。そして、ロシアの女子選手にとってはさらに厳しい状況よ。なぜなら、貴国では毎年新たに強力な選手達が現れるから。
北京オリンピックの後、貴国の選手達は中国市場を開拓した。彼らは今やここで有名人。これは、大きな将来性のあるしっかりとした観客層。今、私は、例えば、シェルバコワの様々なビジネス活動を手伝っていて、ここで重要なのは全てを正しくオーガナイズする事なの。


ショーも同じことで、エキシビション用のプログラムを持つスケーターだけを連れてくることはもうできない。これは10年前、アレクセイ・ヤグディンや他のスケーターを招待したときはうまくいったことだけど。
コロナの後、市場の状況は変わった。企業が広告予算を大幅に削減したため、スポンサーを見つけるのが難しくなった。みんな持ち金が減り、今や娯楽の選択にはより慎重に当たっている。そのため、観客を惹きつける新しい方法を見つけなければいけない。これは、そこに関係する者全員が得にならなければいけないビジネスなの。
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中国市場の利益をロシアのフィギュアスケーターに説明する必要はもうないようだ。今では我々の主要な広告主であり、唯一の国際的なショーの場所がそこなのだ。そして、これは非常に長期間続く可能性があるものである。
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