スーパージャンプを持たないアメリカのスケーターが、4回転の時代にトップで活躍している。彼の歩みは何を教えてくれるのか。

Американский фигурист без суперпрыжков держится в топе в эпоху квадов. Чему учит его история?
Феномен Джейсона Брауна.

2022/23シーズン、男子スケートの複雑さとスペクタクルは限界に達している。

少なくとも今のところ、人間の身体はフリープログラムで4回転アクセルと6つの4回転をする以上のものはできないようだ。ウルトラシーの要素なしでは、実質世界選手権のトップ15に入ることさえ不可能である。しかし、ここに例外がある。

アメリカのジェイソン・ブラウンは、ここ数年、4回転を1度も使わずに最強のウォーミングアップで予選を通過し、グランプリのトップ3ステージのレベルにあると評価されている。

彼のレパートリー中、高難易度のエレメンツは、ジュニアでも着氷できるトリプルアクセルしかない。しかし、ジェイソンの結果は、パラドックスでも間違いでもなく、フィギュアスケートの発展の理にかなった結果なのだ。そして、彼の戦略は最も正しいのかもしれない。

ワリエワレベルの追加点を取得し、コンポーネンツでは宇野を上回る。ロシアでは彼の成績は不名誉なものとされている。

3年前、ブラウンはほとんどすべての大会で4回転トゥループや4回転サルコウをすると申告していたが、一度も綺麗には成功しなかった。回転不足や転倒が原因で、きれいな3回転よりも低い点数になっていた。そこで、彼とコーチのブライアン・オーサーは戦術を変更した。

「僕は何年も4回転にコンプレックスを抱いていたんだ。自分は十分ではない、勝つに値しない、他の人が引き上げた基準に達していない、と思っていた。でも僕はフィギュアスケーターで、より良くなるために毎日努力している。これがスポーツなんだ。氷の上に出て、自分が出来ることを見せるんだ。」と、ブラウンは理由を語った。

アレクセイ・ヤグディンも、このアメリカ人に対して「まだ十分ではない」と言う。「彼はこれから脚を上げるんだ。ただそれだけなんだ。ジェイソン・ブラウンが何でもない奴だと言うのは、間違っているし、不当だ。彼は本当によく滑るし、いいライン、いいスピンを持っている。しかしそれでも、今の世界の男子スケートは4回転ジャンプなんだ。」と、ヤグディンはスケート・アメリカ 2019で語った。

そしてそのシーズン、ブラウンが日本でセルゲイ・ボロノフに敗れてグランプリ決勝に進出できなかった時、ヤグディンはソーシャルメディアに「私の『お気に入り』のジェイソン・ブラウンを決勝に出さなかったセルゲイ・ボロノフに大いに感謝、さもなければそれは恥となっただろう」と投稿した。

そしてジェイソンはタチアナ・ミシナやイリーナ・スルツカヤからも批判された。彼女らは、点数を上げすぎていると審判をとがめた。2022年の北京大会では、羽生結弦よりもコンポーネンツが強い事が疑問を呈したのは事実である。そして、スポーツエージェントのアリ・ザカリアン(ISUコングレスに参加した)は、4回転のないスケーターは、合計点から10~15点を減点することを提案した。

そう、ジェイソンは比較的簡単で価値のそれ程高くないジャンプをたくさん持っているのだ。彼の最も価値のあるエレメンツは、トリプルアクセルとダブルアクセルのシークエンスで、11.3点だ。それに比べて、ISUのトップ10に入るスケーターが全員持っている4回転トウループは、それだけで9.5点だ。トップクラスの選手にとっては必須の要素で、レベル4のスピンやステップだけではもう太刀打ちできないのである。

ブラウンの秘密は、クリーンな演技と高いコンポーネンツである。2023年の世界選手権では、チャ・ジュンファンと宇野昌磨に次いで、3番目に高いGOEを獲得している。彼の記録の最低点は+1だが、それ以外ほとんどが+4、+5である。

このアメリカ人のジャンプは、高さと滞空力、力まない踏み切りと柔らかい着地が特徴だ。スピンでは、常に軸が良く、明確なポジショニングと素早いポジションチェンジができ、ステップでは、深いエッジワークと急激なターンができる。彼のスケート技術は非常に優れているのだ(ヤグディンでさえもそれを認めている)。

加えて、彼は曲調の変化に完璧に適応し、音楽のアクセントや音に動きを正確にはめるのだ。

ブラウンはすでに独特のスタイルを確立しており、リリカルな曲やジャズ・モダンに合わせて演技をすることが多く、それがよく合い成功しているように見える。ジャッジは彼のその選択が気に入っているようだ。今シーズンの世界選手権で、ショートでは宇野選手に次いで、フリーでは最高位のコンポーネンツを獲得している。

最終的にジェイソンは、2日間でそれぞれ5本の4回転を決めたフランスのシャオ・イム・ファ、日本の友野・山本を抑えて5位に入賞した。そしてさらに、非常に難易度のある4回転ルッツと4回転ループをこなすダニエル・グラスルをも超えた。ベースでは50点差をつけていたスーパー記録保持者の同国選手のイリヤ・マリニンでさえ、最終的な評価ではわずか8点差で彼に勝利したのだった。

なぜそうなったのか?

ISUは、安定性、滑走性、パフォーマンスが技術よりも重要であることを示唆している。勝つためには目立つジャンプだけでは不十分なのだ。それがたとえ4回転アクセルであっても。(でなければ、4回転アクセルは12.5点よりもずっと価値があるはずなのだ)。また、4回転アクセルのような負荷が身体にとってどれほど危険であるかもまだ明らかではないため、ジャッジはそのようなクレイジーなリスクを急いで勧めようとはしないのである。

かわりに、大きな大会において、その滑りで会場を盛り上げてきた経験豊富なブラウンにとっては、ライバルから抜きんでるのにそれはメリットである。この道は世界のフィギュアスケート界のボス達にはよく知られており、彼らはこれを今後数年の発展の方向性として選択している。しかし、この道が正しいかどうかは、時間が経ってみなければわからない。

シーズン中は大会よりもショーで滑ることが多く、ライバルにプログラムを提供することさえあった。

彼らは二度競技をした。

ブラウンのスポーツに対する姿勢には、成績以上に驚かされる。彼はキャリアをアイスショーの仕事や振付家としての仕事と両立させない。逆に、競技なしの生活を、トーナメントに出ることだけで補っている。

2022/23シーズン、ジェイソンはジャパンオープン、米国選手権、世界選手権に出場し、残りの時間をツアーに費やしている。彼の内容の難しさを考えると、このようなスケジュールで健康を維持することは現実的なのである。

しかも、アメリカ代表チーム内での競争率はそれほど高くなく、ジェイソンには十分な余裕がある。2、3回欠場してもチーム内でのポジションを失わない。ただし、この場合、ISUのランキングは下がるので、調子に乗るのは禁物だ。

ブラウンの哲学は、ショーと競技を区別しないこと。彼にとってそれらは全て、観客とコミュニケーションをとり、氷上で自分を表現するということなのである。終わりのないツアーは自分を元気にしてくれ、より良い滑りをするのを助けてくれさえすると語っている。「2日間で6つのショーをこなし、それぞれ5回滑らなければならないこともあった。おかげで鍛えられたよ。」

同時に、ジェイソンはテレビの司会者、コメンテーター、演出家としても働いている。ガラショーでは共同演目にも参加し、2022/23シーズンには、ダニエル・グラスルのためにショートプログラムを作成したのだ。グラスルは、「彼は新しい方法で僕を開いてくれ、氷上での感情を恐れないことを教えてくれた。彼の官能的なスケーティング、演技中の観客とのコミュニケーションなど、彼のやることすべてが超クールなんだ!」と満足そうに語った。

2人はこの1年で、同じ氷上で2度顔を合わせた。ジャパンオープンではグラスルが上回ったが、世界選手権では彼は負けた。

ジェイソンは28歳。新しい要素を学ぶことはおろか、以前のようにトレーニングすることもできないことを認めている。彼は前シーズンの終わりに引退することをほぼ決めていたが、現行のルールによって、パフォーマンス能力を高めることで、自分のキャリアを大幅に延ばすチャンスがあることを知ったため、引退を遅らせた。

それは、ウルトラシーをこなすことができなくても、競技には出たいという人にとっての救いではないだろうか。

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