
CISの選手がメダルを獲得する可能性は十分にある
国際スケート連盟(ISU)の理事会は、ロシア人の国際大会への参加の可能性に関する問題を今後数日のうちに検討する予定である。しかし、前向きな決定がなされたとしても、それは来シーズンのことである。日本で開催される世界選手権には、ロシアとベラルーシの代表チームは参加しないことになる。
しかし、だからといって、ロシア出身者やパスポートを持つロシア人、ましてや文化的、精神的に我が国とつながりのあるアスリートがいないわけではない。従来、ロシアのチームに居場所を見出せなかった人たちの第二の故郷は、ジョージアのチームであった。しかし、アメリカなど欧米のチームにも、よく探せばロシア語を話す選手はたくさんいる。
欧州選手権での金メダルは、グバノワを日本での奇跡に導くかもしれない
シーズンが進むにつれて、皆さんはジョージアチームを応援することにももう慣れてきたのではないだろうか?ジョージアのチームは、アナスタシヤ・グバノワがヨーロッパ選手権で優勝したことで、すでに私たちを喜ばせてくれた。今もサンクトペテルブルグに住んで練習しているこのエフゲニー・ルカヴィツィンの教え子は、世界選手権においては明らかにチャンスは少ないだろう。とはいえ、彼女が優勝すると言われる可能性は低いが、このラッキーな布陣の中でうまくいけばメダルをかけて戦うチャンスはある。モリス・クビテラシビリについても同じである。今シーズン全体として、彼は自身の事をマイナスと評価することになるだろうが、それでも同じ様にチャンスがあるだろう。全ては、エテリ・トゥトベリーゼとの協力関係を中断するという予想外の決定から始まった。その関係中断の理由は、大会のためにモスクワからヨーロッパへ飛ぶのは不便だからというようなものだった。特に、イタリアのダニエル・グラスルが、大変であるにも関わらず、エテリのもとで練習することを決めたことを考えると、これは予想外の動きだった。
クビテラシビリは、ロシア代表として演技していた時も、その後ジョージア代表として活躍していた時も、キャリアを通じてずっとトゥトベリーゼの下で滑っていた。イタリア人のロレンツォ・マグリのチームでの成績は、正直まだ印象的なものはない。このヨーロッパ選手権2020の銅メダリストは、主要なスタートですべて失敗し、ショートプログラムの後、1つの要素もうまくいかず最下位になっている。それでも、モリスにもう1度チャンスを与えたい。もしかしたら、マグリはこの冬の間、埼玉に行くために彼を鍛えていたかもしれないし。今シーズン、カリナ・サフィナ/ルカ・ベルラワに関してはチャンスを掴めなかった。ペルミのジョージア人ペアは、負傷のためシーズンの一部を欠場し、代表チームでは、ロシア出身のアナスタシア・メテルキナ/ ダニル・パルクマンにその座を奪われた。しかし、メテルキナ、パルクマンの2人は完全に活動を停止し、サフィナとベルラワは復帰を果たした。彼らの実力は世界のトップ3であり、あとは体調の問題である。
グランプリファイナルで失敗した後、経験を積んだマリニン
ジョージアのチームは、ロシア人だけで構成されている。このチームの残りのメンバーも、モスクワで生まれモスクワに住んでいる。クビテラシビリと違ってトゥトベリーゼのもとに残ったニカ・エガーゼや、期待のアイスダンス選手マリア・カザコワ、ゲオルギ・レビヤなどである。デニス・サモーヒンのところのペアは、ジュニアレベルではとてもシャープな印象だったが、シニアへの移行はまだ決まっていないようだ。誰もがアイスダンスの特殊性を理解している。アイスダンスでは頭上高くジャンプするというものはないが、戦略的な課題をやり遂げることが重要である、ということを。そしてここには、間違いなく優勝のために戦い、ロシアも気になっている人物、アメリカのイリヤ・マリニンがいる。ソ連出身者の息子である彼は、ずっとカリフォルニアで暮らしてきたにもかかわらず、流暢なロシア語を話す。今年、彼は自らを「4回転の王」と呼ぶことが無意味でないことを実践で証明した。マリニンは、史上初めて4回転アクセルを成功させたのである。
しかし、イリヤはまだそのスーパージャンプを大きな勝利に繋げることができないでいる。グランプリファイナルでは経験不足だったが、マリニンは世界選手権には間に合いそうな予感がする。彼と共に、ソ連のフィギュアスケーター、イローナ・メルニチェンコとアルテム・トルガシェフの息子も、アメリカ代表チームの一員として滑っている。21歳の彼は、他に大きな成績がほとんどなく、今ここで競争するよりも、将来の成功に照準を合わせるため日本へやって来た。ダンサーのアンソニー・ポノマレンコとは違う。マリナ・クリモワとセルゲイ・ポノマレンコの伝説的なデュオの息子は、クリスティーナ・カレイラとペアを組んで演技をする。2月の四大陸選手権では、あと一歩のところでメダルに届かなかった。そしてまた、アメリカのシングルスケーター、イザボー・レヴィト選手にも、ロシア人が喜ぶべき理由があるはずだ。チャイコフスキーの音楽で演技をし、ロシア文化に興味を持ち、言葉を学んでいるだけでなく、ユリア・クズネツォワが率いる国内スタッフの指導を受けているのである。
フィリピンやオーストラリアでさえ、今やチームに元ロシア人がいる
ドイツのアリサ・エフィモワがメダリストになる可能性はわずかである。エフィモワは現在、ドイツ代表としてルーベン・ブロマールトとペアを組んで出場する。ヨーロッパ選手権では、このペアは4位に入賞した。世界選手権ではさらに厳しい戦いになるが、理想的な演技と運があれば、3位以内に入ることができるだろう。ちなみに、アリスにとってドイツのパスポートは、3回目のキャリアであるという事を示している。彼女はフィンランドで生まれ、もともとはその北の隣国でシングルスケーターとして競技をしていた。そして2014年になって初めて、彼女はサンクトペテルブルクに移り住み、ペアスケートの練習に励んだ。さて、これで私たちにとって身近な選手たちのメダル候補の布陣については終わりとなる。そしてここからは、異国情緒溢れる代表チームの中で最も異彩を放っているエフィモワの元パートナー、アレクサンドル・コロヴィンについて。コロヴィンは、イザベラ・ゴメスとともにフィリピン代表として出場する。このペアは技術的に出場資格がなかったが、ギリギリのところで予選を通過した。そしてそれは、彼らの将来性を物語っている。
オーストラリアは、バラシハ出身のスケーター、アナスタシア・ゴルベワがヘクター・ジョトプロス・ムーアとペアで演技する。ちょうど2年前、彼女はワリエワ、アカチエワとともにロシア国内ジュニアオリンピックに出場し、今シーズンはグランプリファイナルで優勝、世界選手権で2位となった。これはジュニアの話だが、このペアは同時に2つの競技に出場している。スペイン代表にはアサフ・カジモフがいる。サンクトペテルブルク出身のこのタタール人は、ドイツ代表として滑っていたことがあり、今はソフィア・バルと一緒に暑いアンダルシアで滑っている。全てロシア人で構成されているのはポーランド代表である。トゥトベリーゼとブライアン・オーサーに師事したエカテリーナ・クラコワ、全てのスタンダードな4回転を持つウラジーミル・サモイロフ、そしてアナスタシア・ポリビナ/パーヴェル・ゴロビシュニコフのペアがいる。アゼルバイジャンのウラジーミル・リトビンツェフはウフタ出身だ。
移住者の子供も含めると、世界選手権参加者のうちロシアとつながりのある人はほぼ半分
リストはこれだけでは終わらない。サンクトペテルブルク出身のニキータ・スタロスチンは、所属する連盟の反対にもかかわらず、ドイツ代表としてスケートを続けている。また、ロシア北部の首都出身のゲオルギー・レシェチェンコは、チェコでスケートをするようになった。その一方で、彼はアメリカでトレーニングに励んでいる。パヴェル・コバレフもサンクトペテルブルク出身で、現在はフランスに住んでいる。フランスでは、カミーユというパートナーを見つけただけでなく、彼女を妻としたのである。だから彼らのデュエットは、正式には「コバレフとコバレフ」と呼ばれる。フランス流に言えば、女性の姓に女性名詞は用いないからだ。フランスのアイスダンスには、部分的にロシアも代表して出場するモスクワのエフゲニア・ロパレワもいる。彼女はジョフレー・ブリソーとのデュオで2019年からヨーロッパで滑っている。そしてまた、一連のスキャンダル後に、ハンガリー代表に元ロシア人がいるのを見るのは驚きだ。とはいえ、マリア・ペトロワとアレクセイ・ティホノフは、オルバーン・ヴィクトル(ハンガリー首相)の国でペアを組むことになる。マリアはモスクワの出身、アレクセイはサンクトペテルブルグの出身である。
そしてまた、世界選手権でマリア・イグナティエワ/ダニール・セムコ組が見られることはさらに驚きだった。ロシアとウクライナのコンビは、モスクワでイリーナ・ジュークとアレクサンドル・スビニンのもとでトレーニングを積んだ。オデッサ生まれのセムコがペトロフスキー公園で負傷したとされるニュースがメディアに掲載された。そうであったとしても、傷は奇跡的に治り、イグナティエワとともに日本で演技することになった。また、オランダ代表では、ミシェル・ツィバとのデュオで、ムスコビ出身のダリア・ダニロワが滑る。また、同じくオランダ代表として、ニカ・オシポワはドミトリー・エプスタインとペアを組んで出場する。特に関心を寄せられていのは、「スロバキア人」のキリル・アクセノフ。ひょっとして彼はエドゥアルド・アクセノフ(「クリスタル」の副責任者)の親戚ではないのだろうか?アンナ・シモバとキリル・アクセノフのペアが「クリスタル」に登場するかどうかは、また後で見てみよう…。もう一人のモスクワ出身者、アナスタシア・グリャコワは、初めて本格的なレベルに達した。2020年にロシアからモルドバに渡った彼女だが、ヨーロッパ選手権や世界選手権にはまだ出られるようになったばかりだ。
そしてこれでもまだ、ロシアやロシア語圏につながるアスリートのリストは終わりではない。移住者の子供たちも十分含まれる。例えば、クリスティーナ・バイアーはドイツ人である。彼女はオーベルストドルフで生まれたが、ロシア人の家庭で育った。スロバキア代表では移住したマリア・プチェロワの娘が、そしてラトビアでは、地元流でデニス・ヴァシリエフは「ヴァシリエフス」と呼ばれているが、彼はまだロシア語を話すのである。リガ人のソフィア・ステプチェンコもそうだ。エストニアでは、地元のロシア人コミュニティの代表として、ニーナ・ペトロキナとミハイル・セレフコが世界選手権に参加する。オーストリアではオルガ・ミクティナが、カナダではローマン・サドフスキーが、そしてイスラエルではソビエト連邦出身者の子供らがチームを構成している。
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