「ロシアの選手たちに同情しますが、彼らを見たくはないです。」アメリカのフィギュアスケーターがワリエワ、トゥトベリーゼ、そして我々のスポーツを攻撃した

«Сочувствуем российским спортсменам, но не хотим видеть их». Фигуристы из США напали на Валиеву, Тутберидзе и наш спорт
Важный разговор Эшли Вагнер и Адама Риппона.

IOCがロシア選手に中立の立場を与えるよう進言したことについて、海外の新聞やSNSで話題になっている。そしてロシア国内以上に、この決定の中途半端さに対する怒りが渦巻いている。

米国代表の元フィギュアスケート選手で、ロシア選手の出場停止を最も一貫して支持している一人であるアシュリー・ワグナーとアダム・リッポンは、ポッドキャスト「The Runthrough」(「通し稽古」、「リハーサル」の意)の最新回でこの問題を取り上げた。

記者マイヤ・ベグリャンツェワはその回を聞き、それを引用して紐解いていく。

これは本当に有益なコンテンツだ。我々はそれに合意しなくてもよいし(場合によっては合意しないようにしなければならない)、リッポンとワグナーの考えやその命題は確実に疑問を呼び起こすものだが、しかしそれでもこれは2人の著名なフィギュアスケート選手による対話なのだ。我々は、彼らの考え方、論理、そして我々の文化やシステムに対する彼らの視点を示すため、この本記事を出している。

ワグナーは2014年のソチを振り返り、ロシア女子スケートのブームの理由を探る

アシュリー:私はソチオリンピックに出場しましたが、そこでのドーピング検査システムがどのようになされていたかをよく覚えています。自分の個人的な経験からこれを判断することができます。通常この検査はリンクのある建物で行われました。ドーピング検査担当員(通常はWADAの代表者)がやってきて、誘導されます。検査サンプルを渡すまで、担当員は目線を外すことなく監視しているのです。

しかし、これ以外にもまだ追加の検査があります。ドアをノックしてきて、「あなたは抜き打ち検査に選ばれました」と言われると、医師の診察室のような特別な部屋に行きます。そこは広い空間で、イスがあるだけです。隣には常にドーピング検査担当員がいて、やはりずっと見られているのです。確かにこれは心地の悪い状況で、スケーターにとって不快なことではありますが、これも私たちの仕事の一部です。私たちはそれに慣れていました。

サンプルのすり替という話を作り上げることは、とんでもなく難しいことだったのです。システムは時計のように正確に機能していましたから。

ただ私が言いたいのは、男子スケートのことはあまりわかりませんが、ソチオリンピックまではロシアの女子フィギュアスケーター達は長い間、大会で重要な役割を担っていなかったんです。それが突然前面に出てきて、猛烈なスピードで本格的に結果を出し始めました。

アデリナ・ソトニコワは、ロシア初のオリンピック女子チャンピオンとなりました。そして、団体戦の金メダリストでもあります。当時は、ドーピングの面で何かおかしなことが起きているという考えは誰も持っていませんでした。しかし、これだけの女子選手がどこからともなくいきなり飛び出してきたことに、すでに多くの疑問があったのです。これは本当にものすごい成功だったからです。

ソチ以降、女子スケートにおいてロシアが主導権を握り始めました。続く3つの世界選手権もロシア人スケーターらのものであり続けましたし、2シーズン負けなしのエフゲニア・メドベージェワは、この完全な支配を確固としたものにするだけでした。そして平昌オリンピックでは、ロシアは金と銀を同時にかっさらっていきました。

私が言いたいのは、私たちは決して、すべてのロシア人選手がドーピングをしていると主張したり、信じたりしているわけではありません。全てのことはそれよりもはるかに複雑なことなのです。むしろ、個々の出場選手についてではなく、システムについて語るべきでしょう。

しかし、1つだけ指摘しておきたいことがあります。ロシア人選手達は、他のライバル達ができないようなエレメンツを披露していました。例えば、彼らはどんなジャンプにも3回転トゥループをくっつけることができたのです。ザギトワが平昌でのとある練習の際、、5本の3回転ジャンプをコンビネーションで成功させたのは記憶に新しいものです。ものすごい現実離れした難易度でした。

そして、そのオリンピックの直後から、4回転の時代が始まりました。

この魔法のようなロシア人選手たち-コストルナヤからワリエワまで。

ロシアはソチの罰をちゃんと受けているか?

アダム:そうですね、その次の4年間は4回転ジャンプがメインの時代です。それにはまず、エテリ・トゥトベリーゼのチームの有名な女子3人、アンナ・シェルバコワ、サーシャ・トゥルソワ、アリョーナ・コストルナヤを挙げなければならないでしょう。

彼らはジュニアから登場して、すぐに圧倒的な強さを発揮し始めました。3人でどこかに出場すれば表彰台を独占し、1人でどこかに出場すれば完全優勝を果たすといった風に。2021年の世界選手権でも、ロシアのスケーターが表彰台を独占しました。まあ、厳密には彼らはロシアから来ているというわけではなかったのですが、ロシアフィギュアスケート連盟の代表として来ていました。国旗の代わりに連盟のエンブレムがあったんです。

つまり、ロシアが国際大会から追放されたという感じはまったくなかったんですよ、そうですよね?

アシュリー:そうです、まったく処罰の対象になっていないような感じでしたね!

アダム:まさにそう!しかし、信じられないことに、ロシアのトップ3人の後ろには常に、彼女たちの代わりを務める準備のできている数人の少女たちがいました。コストルナヤ、シェルバコワ、トゥルソワの時は、その代わりの少女としてカミラ・ワリエワがいたのです。

ここで、北京の話に移りましょう。ロシア勢は、実際はロシアを背負って来ていましたが、まるでロシアから来たのではないかのように北京にやってきました。4種目中3種目で優勝候補となり、団体戦でも何の問題なく優勝しまた。

ROCが金メダルを取り、銀メダルはアメリカ、銅メダルは日本が獲得しました。しかし、賞金授与式は思いがけず延期になりました。

当時、僕は北京にいたので覚えているのですが、ラファエル・アルトュニアンがちょうど授賞式へ行こうと、もうバスに乗ったところだったんです。突然、彼が戻ってくるのが見えて、彼はこう言ったんです。「何かが起こっている。」と。僕は、一体何がどういうことなんだ、といった感じでした。

アシュリー:確かに彼は陰謀論についてよく議論しています。でも、時には彼の言うことが正しいこともあるんです!

アダム: とにかく、カミラ・ワリエワは初のシニアシーズンを迎えていて、それはまさに夢のようなシーズンなんです。彼女は無敗で、フリーで3つの4回転を跳び、さらに各プログラムでトリプルアクセルを跳んでいます。

ロシア選手権で、ちょうどクリスマスの日(西暦による-Sports.ru)、彼女はドーピング検査で陽性となり、それがすべてのストーリーを動かすことになりました。

年齢的に、彼女は個人戦に出場することが許されました。そして、選手たちは皆、ただただ呆然としてそれを見ていました。まるで、1994年のオリンピックに出場したトーニャ・ハーディングのようだと。そう、カミラはフリーで崩れ落ちたのです。しかし、チームメイトは金と銀を取りました。

数日後、ロシア選手団は出場停止処分を受けました。

しかし1年が経過し、先日連盟の判断で、私たちの場合はISUですが、再び出場する事に青信号が灯ったのです。

「そうでないと証明されるまであなたは有罪です。」 リッポンはカミラを賞賛しつつ、トリメタジジンの効果を説明する

アダム:ロシア人達は出場停止処分は不当な決定だと訴えています。タチアナ・タラソワ、アレクサンドル・ズーリンは、ロシアのフィギュアスケーターが追放されたことに失望し、懸念していると繰り返しています。僕にとってそれは、彼らがいかに今日のスポーツ界やオリンピック界における自分たちの立ち位置を理解していないか、自分たちの視点の何が間違っているのかを理解しようとしないかを証明しているに過ぎません。

アシュリー:この話は、世界とロシア国内で、いかに異なる認識と報道がされているかを見事に表していると思います。この発言者たちは皆、自分たちが不当な扱いを受けていて、世界中がただロシア人選手を排除する機会を待っているだけだと心から信じているのです。

これは実に複雑で、さまざまな側面がある状況だと思います。そして、私たちは、特定の選手について話しているのではなく、私たちのスポーツの倫理体系とその精神に違反するシステムについて話しているのだということを強調したいのです。しかし、最も怖いことは、このような特定のアスリートを利用し、短期的な成功と引き換えに彼らの健康を奪っていることでもあります。

アダム:そうですね、僕たちは特定のアスリートを責めるためにここにいるわけではありません。そして、残念ながらスポーツにはドーピングが存在します。

よく覚えているのですが、ランス・アームストロングのドーピングスキャンダルが発覚したとき、私たちはトレーニングキャンプにいました。アリーナには、彼の顔写真と名言が書かれた巨大なポスターが掲げられていました。私たちの目の前で、すぐにこれは外され、壁が塗り直されました。翌朝には、オリンピックトレーニングセンターにはアームストロングの面影は微塵も残っていませんでした。

アメリカのオリンピック選手は政府からお金をもらっているわけではない、ということも理解しておく必要があります。確かに、費用を負担してくれる個人スポンサーがいたり、個人的に奨学金をもらったりすることはできます。

しかし、ロシアではスポーツは100%国費で賄われている。アスリートが政府の決定に責任を持つ理由は、そのためでもあります。大会に出場するとき、彼らは準備のための資金を割り当ててくれた団体を代表しているのですから。制度的な違いですね。

若くて経験の浅いアスリートの場合、コーチに言われたことは何でもやるというのはわかります。きっと私だって、反論せずにただコーチの指示に耳を傾けるでしょう。

そして、チームの大人が「これは薬だ、飲みなさい」と言うのです。あなたは反論できるでしょうか?ですから、言われたことをやるだけになっていまうのです。そして、言われたものを飲んでしまいます。それで後になって世界中があなたの不正を非難し始めたとき、あなたは何が起こっているのかまったく理解できなない状況になってしまうのです。

アシュリー:そうですね、何をすべきかは明確に言われますが(ここで私はアメリカでも同じ事態が起こっていると言っているわけではありません。言われた事を聞くということに関しては私たちも同じだということだけです)、最終的にはすべて自分個人が責任を取らなければなりません。ドーピングが発覚した場合、システムでもなく、他の誰でもなく、あなた自身が罰せられるのです。だから、気をつけなければならないのです。

アメリカでは、アンチドーピングの方針が厳しく、陽性反応が出たら(化粧品やプロテインパウダーの禁止物質が原因でアメリカ人選手が陽性になったケースもあります)、自動的に出場停止になるのです。なぜなら、禁止物質が体内に入ったのは自分の責任だからです。

アダム:ドーピングに関しては、「無実が証明されるまであなたは有罪です。」というシンプルなルールがありますからね。

アシュリー:そして、このシステムが機能するには、アスリートは常にそのリスクを認識していなければならない、ということです。ルールに則って行動しなければならないのに、突然そうせず、ある意味逃れることができてしまったら、他のアスリート達は当然疑問が湧いてしまいます。

例えば、ケシの実を使ったパン作りは、理論上アヘン陽性反応が出る可能性が高いので、私はキャリアを通じて控えてきました。みんなそうやって生きているんです。何かを犠牲にするのは当然です。

つまり、私はパンを食べるのも怖いと思っているのに、あなたは偶然とはいえ、心臓の薬を飲むのですか?ということです。

アダム:そうですね。そして本当に驚くべき光景なんですが、ソチ以前はロシアのフィギュアスケーターについてほとんど聞いたことがなかったのに、2014年以降は、まるで雪崩のように、次から次へと素晴らしいスケーターが現れ、しかも、その数がとても多いんですよ!

アシュリー: まるでベルトコンベアーです。若い子、速い子、才能のある子など、延々と新しい子が登場します。そして、このベルトコンベアーに終わりはありません。次々と出てくるロシア人スケーターは皆、その前の選手より優れているのです。しかし、正直なところ、フィギュアスケートの技術は何がそんなに大きく変わったのでしょうか。スケート靴やブレードの製造に革命が起きたのでしょうか?確かに重さは軽くなりましたが、そんなに大きくは変わっていません。

もしかしたら、変わったのはトレーニングのプロセスでしょうか?宇宙レベルのスケーターを輩出するために、彼らはどんな特殊なことをしているのでしょう?そこで登場するのが、エテリ・トゥトベリーゼです。彼女は奇跡のコーチなのでしょうか?成功のための魔法のレシピを持っているのでしょうか?誰も知らないトレーニングの超秘訣を知っているのでしょうか?

私はラファエル・アルトゥニアンのグループでトレーニングをしていたので、ロシアのトレーニングシステムがどのようなものか、おそらく判断できると思います。そしてそれは、少なくともプログラムの一部だけでも常にそれを披露した滑りをすることに基づいているのです。つまり、1日に合計4、5回プログラムをこなすことができるということです。

韓国でのザギトワ選手は、フリーの後半にジャンプを全部やっていましたね。それを見ていて、どうしてそんなことが可能なのか信じられなかったのを覚えています。だって、クレイジーだし、恐ろしくハードだし、プログラムのバランスも悪いんです。でも、一番のポイントは、実質的にすべてのジャンプを連続して、そしてまたプログラムの最後でも跳べるようにするためには、宇宙レベルの準備が必要だということです。そして、狂ったようにトレーニングする必要があるのです。

コーチが指導をし、止めるタイミングを教えられなければならないことは明らかです。そうでないと、マラソンを走るためのトレーニングをしながら、初日にもう42kmを走ろうとする、そんなことになります。それではうまくはいきません。

何より、トレーニングだけがそれを出来るようにしてくれるんです。

アダム:2022年の北京オリンピックで、僕は初めてカミラ・ワリエワのスケートを生で見ました。そして驚きました。あんなの見たことないよ、と。すでにグランプリ大会で彼女を見たことがありましたが、その時テレビで見ていたので。それでももう衝撃を受けていました。しかし氷上での彼女は、まさにワオ!アメイジング、というものでした。

チームイベント前のトレーニングでも、彼女がライバルに半馬身差をつけているのは明らかだった。スケーティングで重大なミスがあっても、彼女は勝つことができるんです。また、ジャンプだけではありません。彼女は天性の才能の持ち主で、音楽に対する優れた感覚を持ち、美しいスピンをし、信じられないほどのスピードで滑るのです。

でも、ハイレベルなスケーターになるには体力が必要だし、たくさん練習して、たくさん滑ることができるようにならなければならないのです。これにはものすごいエネルギーを要します。

カミラのドーピングサンプルから検出されたトリメタジジンは、どのような作用があるのでしょうか?これは血液の循環を良くし、それによってより多く、より長くトレーニングができ、運動後の回復が早くなり、有酸素運動でも呼吸が乱れないようになります。

はっきり言いますと、トレーニング中の絶え間ない反復練習ほど、競技に備えるものはありません。そして、パフォーマンスの安定性に影響を与えるのは、この無限の繰り返しなのです。トレーニングでより多くのジャンプを連続して跳べるようになれば、そしてよりたくさんの回数スケーティングができるようになれば、大会ではどんどん強くなるのです。

カミラには、ドーピングでは得られない素晴らしい資質やスキルがたくさんあります。4回転ジャンプや宇宙的な柔軟性を身に着けさせるような薬はないのですから。

しかし、氷上でもジムでも、より長くトレーニングするのに役立つ薬があるのです。非常に単純な計算で、ダブルアクセルを習得するのに100時間かかると想像してみましょう。1日2時間トレーニングすれば50日でできるようになりますが、もし私の体が1日4時間トレーニングできるほど耐久性があれば、同じアクセルを25日でできるようになります。ですから、そういった薬は、より多くの力を、そしてトレーニングでのより多くの反復練習を「買う」ことができるのです。

思春期、メルドニウム、そしてアレクサンドル・ズーリンという「愚かさの神化」

アシュリー:女子の身体の発達についていろいろとお話しできるのですが、思春期はジャンプを台無しにする、という明白な事実があります。というのは、ジャンプの時に体をひねると、その間、細い小枝のように見えるというひとつの事実があるからです。子供の時の体のねじれは、もちろん別物です。

そしてもうひとつ、思春期になって胸やお尻がでてくると、体のプロポーションが変わり、ジャンプのテクニックも変わってきます。だから、思春期の到来を遅らせる一つの方法として、根気強く長時間トレーニングすることです。そうすれば、身体的な変化やホルモンの深刻な変化に対応できないことを、身体自身が理解するのです。そして、思春期前の身体の状態が長いこと「凍結保存」されるのです。

こういうのを見ているとただただ怖いです。彼女たちは13歳でも17歳でも、まったく同じ姿をしています。そして、ジャンプやトレーニングもどの時もまったく同じようにできるのです。普通じゃありません。彼女たちの身体は、とてつもないプレッシャーとストレスにさらされているのです。だから、オリンピックの1サイクルが終わると、彼女たちはあっという間に姿を消してしまうのです。

しかも、自分たちにどんなことが起きていて、どんな未来が待っているのか、誰も説明してくれないのだと思います。だからこそ私は、これはスケーター個人とその決断の問題ではなく、システムがそのような状況にしているのだと思うのです。国は、結果やメダル、記録を必要としています。一番強くて、一番速くて、一番耐久性がある。我々の国にはこんなに成功している選手がいるんだ!ということなのです。

フィギュアスケーター達は、そのための手段でしかないのです。そして、最後の一滴まで搾り取られたとき、彼らは役立たずとして捨てられるのです。

アシュリー:だから、ロシアの選手を復帰させることはできません。システム自体が罰せられるまでは、自国の繁栄のために選手を利用し続けるでしょう。韓国の時は、制裁を受けているにもかかわらず、チーム名がロシアからのオリンピック選手というように聞こえました。ロシアそのものも、ロシア国旗も、行くところはどこにもなかったのですが、これはサーカスであって、罰ではないのです。

アダム:私は本当にロシアの選手たちに同情します。彼らは一生懸命、朝から晩まで練習しているのに、彼らが属している構造はまったく罰せられていないのです!つまり、ドーピング疑惑のために旗を掲げずに競技をしているわけですが、そんな状況でもアンチドーピングのルールを破っているわけです!こんなことがあっていいのでしょうか?

そう、今日のロシア選手の出場停止処分は、ドーピング事件とは直接関係なく、政府の措置に応じたものなのです。

アシュリー:そう、しかし彼らはきっと、政治的な状況を抜きにして、組織的かつ露骨なルール違反に対しての出場停止処分を受けるべきだったのです。夏のスポーツでも冬のスポーツでも、ルール違反はなくなっていないようです。

ロシアでオリンピック選手がどのように受け止められているか見てみて下さい。彼らは「ROCやOAR代表の金メダルリスト達」と思われているのでしょうか?違いますよね、ロシアのオリンピック・チャンピオンとして発表されるのです。これのどこが罰だというのでしょうか?

アダム:そうです。しかも、彼らは自分がいじめられているように感じています。ロシア人選手らはとても手の届かない存在だから、出場停止にするための口実を考えなければならないんだ、と思っているのです。私はロシアのチャンネル・ワンを見ているわけではありませんが、ソーシャルメディア上で、同世代のアスリートの投稿で見ることがあります。北京のドーピング事件では、選手への同情の声がSNSに溢れました。

もし、アメリカの女子選手がドーピングで捕まったとしたら、どうなっていたか想像するのが怖いです。きっとすぐにみんなその選手から距離を取って、その子は追放されると思います。そして、その未成年の選手は周りにいる大人たちから、たくさんの嫌な質問をされることでしょう。そして間違いなく、すぐに出場停止処分を受けることになるのです。

エテリ・トゥトベリーゼは、彼女のチームの誰がそのような薬を手に入れることができるかを知っていたに違いないと思います。もう一度強調しておきますが、僕はみんなが違法薬物を摂取しているとは思いませんし、メルドニウムが水道水に直接溶かされているとも思いません。

しかし僕は、こういう思考が存在すると思っています。このスケーターは金メダルを取れるかもしれない、それなら多少のリスクも正当化される、というような思考です。重要なのは、何が禁止され、何が許可され、どのように他の薬と組み合わせるかを理解するためには、プロフェッショナルが必要だということです。

アシュリー:そうですね。こうしたニュアンスを全て理解している、医学的なバックグラウンドを持つプロフェッショナルの話をすると、私はすぐに昔のメルドニウム疑惑を思い出します。その時はロシアのアイスダンスの女子選手がそれに巻き込まれていました。

確か、エフゲニー・プルシェンコも当時、『ただのビタミン剤だ、ばかばかしい。』と書いていたと思います。そして、私も当時は説明された通りだと思っていたのです。これは単純なビタミン剤で、体にいいものだと。ですから、メルドニウムとトリメタジジンが、どちらも心臓病の薬であるというのは、純粋に偶然の一致なのかどうか、私は大いに疑問です。

アダム:いつも挑発的で極めて知的でない発言をする(自分が何を話しているか全く考えていないように感じられる)アレクサンドル・ズーリンが、北京のドーピングスキャンダルに関する最初のリーク直後にまたしても、「誰でもあり得る」みたいなことを言ったんです。愚かさの神化のようなものですよ。

普通は、オリンピックのアスリートならみんな、透明なぐらい潔白でないといけないはずなんですよ?彼の言葉から僕はこういう結論に達しました。何をいつ摂取するかという明確なタイムテーブルがあり、それを管理する人がいる、ということです。このような行為は既にこのシステムのDNAに組み込まれてしまっていて、それを打ち破る唯一の手段は、その頭の部分を切り落とすことしかないのです。

「全面禁止、あるいは国を離れるか」ロシアのフィギュアスケート選手の中立的地位の基準

アシュリー:私は、この状況で唯一の適切な罰は、全面的な出場禁止だと確信しています。それはアスリートにとって不公平だとおっしゃいますか?そうではありません、アスリートに対して何が誠実でないことかわかりますか?システムの利益のために、彼らの身体と耐久力を利用することです。そしてこれは、誰かの利益になる限りは止まらないのです。

つまり、解決策はひとつしかありません。将来、一人でもドーピングが発覚したら、その国全体が次のオリンピックは出場停止になるというものです。なぜなら、そうしなければそれを犯した国の選手達以外の他の選手達のみが、ルールに従わなければならないことになるからです。そして、「おっと、捕まってしまった。こういうことはやめなければ。」となる代わりに、「おっと、捕まってしまった。今度はもっと賢くやらなければ。」となってしまうからです。

アダム :そうですね、アスリートにとっては、これは見ていて辛いです。だって、競技をする要は、ベストを尽くそうとすることなんですから。誰もが羽生結弦やネイサン・チェンになれるわけではないけれども、ベストを尽くすことはできます。優勝を夢見ていても、自分より上手で強い人がいる、それが普通なんです。それは悲しいかもしれませんが、同時に素晴らしいことでもあります。

なぜなら、誰かしらは最大限の力を発揮することができたということだからです。そして、すべての視線がその人に注がれるのです。それがスポーツです。世界を前進させ、新しいものを思いついた人が勝つのです。そして、僕たちはこの大会ではベストを尽くせるよう頑張るけど、結果は結果、強い人が勝つんだ、というのは誰もがわかっていることです。すべてのアスリートの頭の中に、そのような考えがあるわけではないのが、とても残念です。

でもだからこそ、僕たちのスポーツは、互いへの尊敬の念に満ちているのです。そして、競技生活を終えた後でも、かつて活躍された選手を見て礼儀を尽くするのは、彼らが経験したことを僕たちが知っているからです。自分も経験してきたからそれがわかるんです。年齢を重ねれば重ねるほど、かつての選手たちを尊敬するのです。そうして彼らの事がより深く理解できるようになります。

スポーツの考え方は、科学の力を借りてどう発展させるかではなく、日々、より良く、より強くなることなのです。

アシュリー:だから私は、ロシア人選手の出場承認が望まれているというニュースを見ると、混乱するんです。ハハハ。しかもまた中立の旗の下でとなると。そして、そんな風に曖昧なのには理由があるのです。

例えば、ソーシャルメディア上であっても、敵対行為を積極的に支援する選手を認めないという条項があります。なるほど、ではそれはどういうことでしょうか?競技中に支援するということでしょうか?このIOCの声明よりも前にということでしょうか?それとも特別軍事作戦開始後に?ここで完全に明らかなのは、起こっていることを公に正当化するようなアスリートは、それがどんなものであろうとも、禁止事項に入れられるべきだということです。昨日まで支持していたのに、今日になって目が覚めた、ということがないようにも、ですよね?なぜなら、たとえ「目が覚めた」としても、それは再び国際大会に出たいと思ったからでしょう。

アダム:とはいえ、公平に競技する準備が出来ていて、紛争を支持していない選手には、国際舞台への復帰の機会が与えられるべきだと僕は思います。この場合においてのみ、彼らは常にドーピング検査が行われることと、ロシアでのトレーニングの停止に同意する必要があります。

アシュリー:そうです、そうしてこそ、システムから脱却できるのですから。つまりどういうことか?政府からの資金援助に見切りをつけ、自分たちで費用を払い始めることです。そして、制度にとどまり、国から資金援助を受け続けているコーチの元では滑らないことです。そして間違いなく、RUSADAではなくWADAによる定期的なドーピング検査を受けることですね。そうすれば、真の意味で中立とみなされるでしょう。

アダム:この初歩的な点がクリアされないならば、どんな中立性を語れるでしょう?北京オリンピックまで、ROCチームの国歌はどうあるべきかという議論がありました。結局、チャイコフスキーになったのですが、これは果たして罰なのでしょうか?こんなものは素晴らしい音楽じゃないですか!チャイコフスキーは天才ですよ。

今、ロシア人は意思決定のプロセスに関わることができないし、その特権がなくなったということを強調するのは、とても重要なことです。

アシュリー: 最近、ISUやIOCの声明を読んでいると、「ロシア人と話し合ったのだろう」という思いから逃れられないのです。中立的なアスリートを認めるという判断は、明らかに中立的ではなかったのです。

アダム:彼らは自分たちの行動を見直す必要があります。理解してほしいのは、私たちは特定のアスリートに反対しているわけでもないし、これは個人全般の問題でもないのです。問題は、怪物的な連盟と指導部なのです。

スポーツの精神を信じないのであれば、なぜ世界の舞台で活躍する必要があるのでしょうか?そこで全てが公平でないのなら、競技をする意味も、観客として見る意味もないではありませんか?私は選手を見て、その子がもたらす魔法を信じたいのです。誠実に、ルールに則ってです。今やすべてのアスリートに対する信頼が損なわれているのです。何も罪を犯していないアスリートでさえも!

そして忘れてはならないのは、いまだにオリンピックのメダルを受け取っていないアスリートがどれだけいるかということです。

北京のメダルは授与されるはずだったが、選手らは それを「奪われた」

アシュリー:腹立たしいことです!北京での授賞式は絶対に行われなければならなかったはずなのに、なかったんです。みんな面目を保ちたかったんでしょう。

オリンピックの表彰台に立つ瞬間は、私の人生の中で最も鮮烈な体験のひとつです。そこに立ち、オリンピックの炎を眺め、オリンピックのメダルをかけでもらう、これ以上の喜びはないでしょう。そして今、私たちのところには、オリンピックで銀メダル(あるいは金メダルだったかもしれませんが、それは誰にもわかりません)の瞬間を得ることができなかったアスリートたちがいます。彼らは、ただ単に奪われたのです。しかし、もうその瞬間はすでに過ぎ去ってしまっています!

それにはくそくらえです。終わった後に判決次第でメダルを再分配することもできたはずです。もしくはメダルを渡さないことも。しかし、もしロシア人からその賞を取り上げることになれば、それはのあなた方の責任です。なぜなら、ロシア人の出場を許可したのはあなた方なのですから。

私はこのようなことを話すのはまったく好きではありません。こういうことを話す理由がなくなればいいなと思います。

しかし、現実に何が起こるかわかりますか?何も起こらないんです。新しい3文字の頭文字を考え出して、その後援のもとでロシアの選手たちが競うだけなのです。考えてみてください。国際機関はみな、ロシア人が出場できるようにする方法を探しているのです。そして、ウクライナの選手たちの気持ちが想像できますか?どんな気持ちでしょうか?

アダム:僕は一方で、すべてが失われたわけではないと信じています。世界中の多くのアスリートが、「もうたくさんだ、これ以上我慢できない」とわかっています。

その一方で、こないだ終了した世界選手権を見てみてください。僕らはアスリートは関係ないとは言い続けていますが、埼玉にロシアのコーチや関係者が何人いたのか見ましたか?この欠陥だらけのシステムを機能させたのは、彼らの方が責任重大ではないでしょうか?でもその代償を払っているのは選手たちなのです。

アシュリー:考えられません!たとえそれが他の国の選手と一緒であっても、キスアンドクライに座っているエテリ・トゥトベリーゼ。 彼女はロシア市民ではないのですか?ISUはどうしてそれを許したのでしょう?それを見たとき、私は完全にショックを受けました。

アダム:そうですね、他にもコーチはいましたが、やはりスキャンダルの中心にいるのはエテリです。彼女個人にも、そのスタッフについて、非常に多くの疑問があります。

実際、僕らがこの話をしているのも、彼女が起因になったからです。正しい方法ではないが、世界一のコーチとなる、有名になる、という彼女の願望が起因になっているからなのです。それなのに、彼女は競技会に来て、誇らしげにカールした髪を振り払っているんです!一方、彼女のスケーターたちは、大会の出場停止処分を受け、家に座っている!そんなのフェアじゃないでしょう?

Photo: Gettyimages.ru/ Catherine Ivill, Justin Setterfield, Matthew Stockman, Streeter Lecka, Matthew Stockman; RIA Novosti/Alexander Wilf, Vitaly Belousov, Alexey Filippov ; globallookpress.com/Paul Kitagaki Jr./ZUMAPRESS.com, Brian Cassella/ZUMAPRESS.com 長田洋平/アフロ 青木浩二/アフロ Ma Ning/ XinHua ; 1tv.ru

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