ロシアのスポーツニュースエージェンシーRIA Novosti Sportは、2022年のオリンピックチャンピオン、カミラ・ワリエワの才能が昨シーズンで新たに開花し、北京で起きたドラマに屈しなかった理由について考察している。
ワリエワは北京に出た3人組の中で唯一、オリンピック後のシーズンを始めから終わりまで通して出続けた選手だ。
テストスケートから地元のグランプリ、ロシア選手権、新しい大会、氷上ショーまで。アレクサンドラ・トゥルソワやアンナ・シェルバコワに対して非難する理由を探す必要はない。彼女たちの計画は、それがどのようなものであったにせよ、第一に健康に関する問題があったため修正されてしまったのだ。 しかし、カミラ自身には新たな才能の側面が開かれた。
表現やジャンプの才能に加えて、彼女は明らかにユニークな身体能力も持っている。肉体を再生する能力、さらに言えば精神を再生する能力、この点でカミラに匹敵する人はほとんどいないだろう。
悲劇的なシナリオの中で、その打撃はキャリアの終わりにつながる可能性があった。たとえそれが若い15歳のフィギュアスケーターであっても。
「オリンピック後の半年間、私は続けていくことも、あの時書かれたり言われたりしたことを考えないでいることも、信じられない程難しいことだと思いました。成長し、体が変化し、休養をはさんでトレーニングに戻ると、3回転ジャンプをうまくまとめることができないことに気付くんです。単にトリプルトゥループを跳びに行っても、それができないんです」と、彼女はチャンネルワンのインタビューで述べている。
しかし予想外にも、国際大会からロシアの選手が一斉に除外されたことがよかった。一瞬で全員が同等の条件になったのだ。
カミラは、自分ひとりで孤立することがどんなことなのか真剣に理解する時間がなくて済んだ。さらに、彼女はロシアで驚くべきサポートを受けた。彼女の物語はスポーツドラマの枠を超え、熱狂的な群衆の中のインディゴチルドレンの物語へと変わったのだ。あまりにも才能に恵まれた子供だったため、大人たちの一部は彼女を罰する準備ができていたが、もう一部は彼女を全て許そうとしていた。
そして幸運なことに、後者の方が人数が多かったのだ。


1年後、冷静に考えてみると、カミラにとって、このプログラムは本当に心理療法の一種であったと言える。つまり、すべてが無駄ではなかったということだ。重要なのは、今後ずっと被害者としてのイメージに固執しないということだ。それは勝者としてのイメージとは正反対のものだから。
一方で、カミラは4月末に17歳になったばかりだ。この1年で、彼女は賢くなった。まだ子供っぽく笑うこともあるが、会話では完全に大人びたことを言う。そして、オリンピックで今のような資質がなかったことを、率直に悔やんでいるのだ。それは、技術的な能力の低下を補って余りあるものだった。
「多くの人は、カミラ・ワリエワは叙情的なスケーティングしかできないと思っています。でも、どうやってそれがわかるのでしょうか?成長はしなければなりませんが、自分が完璧だと思いこむべきではないのです。そうでなければ、堕落するだけです。」と、カミラはインタビューで語っている。この言葉は、無意識とはいえ、コーチングスタッフに向けられたものであるようだ。
今シーズンのカミラには、創造性を発揮するための余地がずっと与えられていた。
最初は、黒いドレスに身を包みTikTokで話題となった「ウェンズデー」、そしてタンバリンを持ったシャーマンが氷上で雨を降らせるなど、目を見張るようなナンバーもある。ワリエワは、これまでこのようなスケーティングをしたことがなかった。
新しいイメージが生み出した成功は、次のシーズンのプログラムについて、ディレクターのダニエル・グレイヘンガウスに、真剣に考えさせるはずだ。
カミラは、眉をひそめてドラマをやる必要はまったくない。彼女のクリエイティブの幅は、おそらく世界で最も広い。
皮肉なことに、カミラ・ワリエワは、短期的な輝かしいキャリアシステムにおける最も完成された産物となり、エテリ・トゥトベリーゼにとって最初のシニアチャンピオンかつ本当に長いキャリアへの最も現実的な可能性なのだ。
目に見える体型の変化があるにもかかわらず、カミラは4回転トゥループを飛び続けている。
彼女がオリンピックに出場するには、まだ長い道のりがある。しかし、それこそがオリンピックというものであり、平時には達成不可能と思われることなのだ。それに、ワリエワ以上の成果をあげることができる女子選手は、世界でもまだほとんどいない。
そして彼女の可能性の限界は、ロシア人選手がどれくらいで再び国際大会に出場できるようになるか、という外的状況によってのみ制限されているのである。
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