「ワリエワ事件」で新たな事実が明らかになった。裁判所はそれを処理しきれなかった。

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カミラ・ワリエワ事件のCAS審理は延期となった。

ローザンヌのスポーツ仲裁裁判所（CAS）は、ロシアのフィギュアスケーター、カミラ・ワリエワの訴訟を審議するために割り当てられた3日間では収められなかった。9月26日から28日にかけて、3人の仲裁人からなるパネルがRUSADA、国際スケート連盟（ISU）、WADA、ワリエワ、そして専門家の証言を聞いた。最終的には、「追加書類を準備する」ことが決定され、11月9日から10日にかけて双方の証拠の精査を続けることになった。そして、CASの慣例からすれば、判決が公表されるのは新年になってからになるのはほぼ間違いない。つまり、2022年オリンピックの団体競技のメダル獲得者へのメダル授与は、2年以上停止するということになる。

裁判所に対する尊重を軽視

CASのプレスリリースには、この長年の苦難に満ちた事件における新たな延期の理由は明記されていない。しかし、病気や欠席に関する情報がなかった以上、選択肢はひとつしかない。仲裁人たちにとって新たな事情が明らかとなり、当事者たちはそれについて何らかの形でコメントする準備をする必要があるということだ。RIAノーボスチ通信によると、事情というのは、トリメタジジンの陽性反応についてワリエワに通知する際の期限違反である。検査結果の通知は、選手とその代理人、ISU、IOCといった利害関係者すべてに同時に行われるべきものである。しかし、何らかの理由でWADAがRUSADAの同僚たちを追い越してしまい、その結果、カミラのチームは公式機関よりも遅れてこの選手の問題を知ることになった。

このニュアンスがどの程度重大なのかは、なんとも言えない。結局のところ、ストックホルムのラボの過失による分析の遅れ（標準的な3週間ではなく6週間以上）もあるのだから。仲裁人たちが、「被保護者」（未成年のアスリート）に対するこの権利侵害を、最終的に彼女の容疑を晴らすのに十分な理由とみなすかどうかに多くのことがかかっている。今のところはっきりしているのは、アメリカ代表チームとアメリカのアンチ・ドーピング機関USADAが描こうとしているもの以上に、この事件は複雑だということだ。ローザンヌでの公聴会の前夜、フィギュアスケーターのヴィンセント・ジョウとUSADAのトラビス・タイガート会長は、オリンピックのメダルが長い間授与されていないことによって「クリーンな選手」の権利が侵害されていると主張した。

ところで、ロシア嫌いで知られるトラビス・タイガート氏は、今回の公聴会延期に「ロシアの陰謀」があると見ている。「もちろん、我々は完全かつ正当な手続きに賛成だが、これはロシアによるさらなる操作の匂いがする。こうしたことが続かないようにシステムは変わらなければならない。」とUSAトゥデイ紙にてタイガート氏は述べた。残念ながら、このような言葉はパラノイア(妄想症)だという以外に説明できない。ロシアは、ワリエワのドーピングサンプルの状況を6カ月以上調査し、その後も3カ月間判定を下した。しかし、2022年12月以降、すべてはCASの手に委ねられ、それから9カ月以上が経過した。独立した仲裁人を急がせることは、裁判所に対する尊重を軽視している。

制裁は妥当ということになるか？

ロシアも訴訟の延期をあまり快く思っていないと言える。それはカミラにとっては追加費用となり、新たな頭痛の種でもあるからだ。11月10日～13日、24日～27日にかけて、彼女はロシアグランプリの舞台で演技をしなければならない。そして万が一、ネガティブなシナリオになった場合、これらの舞台での彼女の成績は取り消される可能性がある。「大の大人が、少女の神経をすり減らしていることに気づかない。無駄に彼女を破滅させている！彼女は悪くないし、彼らは問題を引き延ばしているだけだ。何にも期待できない。ひどい話よ。私が唯一信じているのは、ワリエワは滑るということ。彼女はフィギュアスケートを愛しているし、私たちも彼女を愛しているわ。」と、有名なフィギュアスケートのコーチ、タチアナ・タラソワは『SE』に語った。

「CASには独自の法がある。彼らには何か情報が必要だったのかもしれない。残念ながら、私たちにできることは何もない。」と『SE』に元ISU副会長のアレクサンドル・ラケルニク氏は述べた。「決定手続きには1年かかると読んだ。何もかもが長くてはっきりしない。この状況はカミラにも影響すると思う。彼女はそのような刃の下を進んでいる。どうトレーニングすればいいというのか？次に何が起こるかわからないのに、どうやって演技をするのか？これらすべてが彼女に影響を与えるだろう。」

規則では、判決が公表されるまで、当事者は審問についてコメントすることが禁じられている。しかし、WADAはすでにその立場に変わりはないと表明しており、引き続きワリエワの4年間の失格処分と、2022年のオリンピックでのロシア代表チームの金メダル剥奪を主張している。一方RUSADAは、警告にとどめることも可能だと考えている。「私たちは、ワリエワの側が、ルールで定められたレベルにおいて、彼女に罪が完全にないことを証明できなかったと考えている。」と、RUSADAのヴェロニカ・ロギノワ事務局長は『SE』に語った。「RUSADAは、彼女にはルール違反の罪があると考えているが、それは最小限のものであり、妥当な制裁は警告で済むだろう。」

社会的責任としての罪

一方、今回の騒動に関与した医師のひとり、フィリップ・シュベツキー氏は、長年ロシアのフィギュアスケートチームに携わってきた人物で、今回の件について発言した。その前日、この医師はモスクワのニクリンスキー地方裁判所で、ジャーナリストのハヨ・ゼペルト氏に対しての、名誉、尊厳、ビジネス上の名声の保護に関する訴訟の予備審問に参加した。これは、このドイツの有名なドーピング反対者が、「シュベツキー被告はワリエワの体内に禁止薬物を混入させた犯人だ」と発言したことについてである。シュベツキー氏自身は、ロシアの裁判所からいかなる通知も受け取っていないと主張している。それにも関わらず、同医師の訴訟の本審理は11月17日に予定されている。

「このような事態になったことに責任を感じている。ある意味での社会的責任であり、これが問題なのである。誰かに責任を転嫁しているのではない。もし私自身が責任を逃れるなら、選手たちが取ることになってしまう。」と『RIAノーボスチ』は彼の言葉を引用している。「そう、彼らはすでに私をスケープゴートにしたのだ。当初の賠償請求額1000万ルーブルは1ルーブルにまで減額された。弁護士と私がこの決定を下したのは、当初、金銭的補償とその規模は私にとって重要ではなかったからだ。この決定によって、私たちはこの訴訟において真実が最も重要であることを示したいと思う。グラスの件に関しては、事実に基づいた説だ。」

医師が言及したのは、フィギュアスケートでは役に立たない少量のトリメタジジンがワリエワの体内に摂取された説明のひとつだ。2022年2月のオリンピックの個人種目へのカミラの出場許可に関するCASの審問で、選手の祖父は心臓病の薬を服用していたと断言しており、カミラは家庭内で家族の洗っていないグラスを使用した可能性がある。これに先立ち、シュベツキー氏はタス通信とのインタビューで、この説について次のように述べている。「そもそもどのようにして彼女の体内に入ってしまったのか、その事実を明らかにすることが急務だった。偶発的なものであることは明らかだった。私たちは薬理学研究所と連絡を取った。この量を完全に体内から排出するには24時間～72時間かかり、それ以上はかからない。だから、そう、最初に思いついたのはそうすることだった。」

いずれにせよ、CASの裁判は進行中であり、遅かれ早かれ裁判所は決定を下すだろう。「裁判は進行中であり、当事者、証人、専門家の意見を聞いている。追加調査が必要な状況が発生している。」と、スポーツ弁護士のセルゲイ・アレクセフは『KPスポーツ』のインタビューでローザンヌでの延期について説明した。「判決は2、3日で下されるとは限らない。裁判所が司法調査を徹底的に行い、そのプロセスに気を配っているという事実は、ワリエワにとって有利でしかない。もし政治的な決定草案が準備されていたら、すべてのことがすぐに起きていただろう。」