オリンピックを2連覇した羽生結弦が、前作(同じく大規模なショー)の初演からわずか半年余りしか経っていないにもかかわらず、アイスショー「RE_PRAY」の開催を発表した。
そして今、この日本人はソロツアーに乗り出し、没入型のパフォーマンスに初挑戦する。それはどんなものなのか。

冬に羽生はすでに特別な形式を見せている。一人で氷上で3時間滑るというものだ。
まずは、ユヅがいかにふんだんなアイデアでショー業界に飛び込んだかという背景から。
彼はアイス・パフォーマンスの新しい方向性であるワンマン・ショーを展開している。アリーナには全パフォーマンスを通して1人のアーティスト、つまりユヅ本人がいるのだ。スケーターはそれ以上誰も出てこない、つまり、羽生はセクションとセクションの間に合間をとるだけで、ずっと滑り続けるのだ。演技は3時間にも及び、しかもユヅはスケーティングやスピンだけでなく、3回転ジャンプも跳ぶのだ。
そういうプロジェクトだったのが「Gift」だ。(英語で翻訳は贈り物)
2023年2月、羽生は3万5000人の観客をスタジアムに集め、さらに3万枚のチケットが4カ国の映画館で販売された。そして国際ストリーミングサービス「Globe Coding」でオンライン放送された。これはフィギュアスケート史上最大のアイスショーだった。
「Let Me Entertain You」やフリーの「Rondo capriccioso」といった往年のヒットプログラムに加え、ユヅはオーケストラの生演奏による音楽、セット、グラフィックを加えた新しいナンバーを披露した。
初演後、ファンから「Gift」の再演はいつになるのかという質問が殺到したが、再演は予定されていない。これは一人のアーティストのショーであるだけでなく、一夜のショーでもあった。現在は、日本の「ディズニー+」で時折流される録画でのみ存在している。
では今回の特徴は?
一方、羽生結弦は新たな公演を準備している。今回はツアー公演である。
11月に埼玉で2回、1月に佐賀で、2月に横浜で公演される。このプロジェクトもまた、初めての試みだ。通常、フィギュアのツアーは少なくとも十数回の公演で構成され、平均10~20のナンバーをそれぞれの選手が演じる。一方、彼の方は今回もソロ形式を選んだ。
一人で数時間の演技を続けるのは非常に難しく、それを3回繰り返すのは大きな挑戦だ。
ショーのタイトル「RE_PRAY」には、いくつかの意味が隠されている。まず、羽生が大好きなコンピューターゲーム文化へ触れていることである。リプレイは「再生」と訳され、今回のツアーの中で、まるでユヅが自身のキャリアを再生しているかのようだという。そしておそらく、このシナリオでは結末は現実と同じではないだろう。このことについて羽生結弦はこう語った。
「『RE_PRAY』には、僕の経験の中で大きな部分を占めてきたゲームの世界の倫理観や価値観の要素が含まれています。人生は一度きりですが、ゲームは何度でもリスタートできますし、そこには大切な教訓がたくさんあります。それを言葉とスケートで伝えたい。」
「RE_PRAY」は「Gift」と同じく、「羽生結弦のアイスストーリー」という巨大プロジェクトの一部なのである。ストーリーの基となっているのは、彼の人生の出来事なのだが、ただ続編では、それらは新たに構成されるのだ。
「視聴者の中には、自分の過去が昇華されていることに気づく人もいるでしょう。考えすぎ、心配しすぎだったのだということに。しかし、氷上では二度起こるようなことはないんです。正解はひとつではないんです。そして僕は、誰もが自分の中にしか生まれない世界の色を感じることができるようになることを願っています。」
羽生はこのショーで、彼が表現したように 「人間の本質、希望、祈りから来る 」人生についての問いに取り組むつもりだ。タイトルに「play」ではなく 「pray」という言葉が使われているのはそのためだ。
彼は一人で演技をするだけでなく、台本を書き、ツアーをプロデュースしている。今回、彼の振付を担当するのは、日本で最も有名な振付師である水野幹子(MIKIKO)だ。彼女はイレブンプレイというダンスグループを立ち上げ、日本のポップソンググループのミュージックビデオを数十本制作し、2016年夏季オリンピックの閉会式では、リオデジャネイロから東京へのオリンピック旗の引き継ぎ式の振り付けを担当した。
MIKIKOによると、彼女は「Gift」と大きな単独ショーのアイデアにとても感銘を受けたという。そして今、彼女と結弦は「RE_PRAY」でこの形式を発展させ、ショーが終わった後に観客でさえも、まるでゲームのレベルをもう一度旅したかのように、自分の人生を新たな視点で見れるようになることを約束している。
「様々な選択肢の中から自分で選んだ道を通って、見たこともない場所に行く。それがあなたの物語になる。羽生さんの言葉が皆さんの人生に触れて、この作品は完成するのです」とMIKIKOはそのアイデアを表現した。
「RE_PRAY」は11月4日に埼玉で初演される予定だ。
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