
女子シングルスケートの技術的劣化は明らか
ロシアグランプリシリーズ第4戦はすでに終了したが、女子選手達の演技において、技術的な観点で本当に印象的な演技というものは見れなかった。カミラ・ワリエワ、アリーナ・ゴルバチョワ、マリア・パラモノワ、ダリア・サドコワのウルトラシーの試みはあった。しかし、これまでの全大会で4回転を成功させたのはアデリア・ペトロシアンだけだ。
トリプルアクセルを成功させたのもアデリアだけだった。彼女の後ろには誰もいないのだろうか?結局のところ、わが国の女子シングルの完全な優勢性を語る必要はない。なぜならこの間にも、国際大会では4回転ジャンプ、そしてトリプルアクセルも1回ずつ成功しているからだ。アレクサンドラ・トゥルソワとアンナ・シェルバコワの離脱で「競争」は終わったのだろうか?
ペトロシアン―唯一女子シングルを支えている選手
国際スケート連盟(ISU)は、いかなる厳しい条件下でも、ロシア人選手がISUの庇護の下で大会に出るのを認めることをまだ良しとしていない。したがって、少なくとも大体の戦力均衡を評価できる唯一の選択肢は、ロシアの大会と海外の大会の成績を比較することである。結局のところ、主観的な指標でしかないが。しかし、技術的な内容を比較すればどうか…。この5年間、ロシアの女子シングル選手は、出場するどの大会でも文句なしの優勝候補という重責を担ってきた。最も重要なのは、彼女たちが進歩の象徴として紹介されたことである。これは本当に公平なことだった。というのも、アンナ・シェルバコワとアレクサンドラ・トゥルソワがシニアへ来て、このカテゴリーを一変させたからだ。女子の4回転ジャンプは、最初は珍しいもののように見えたが、やがてエリートレベルに上がるための必須条件となった。
徐々に、4回転ジャンプはロシア内外の他のシングル選手たちにも習得されるようになった。しかし、今シーズンはアンナもアレクサンドラも出場していない初めてのシーズンだ。ロシアフィギュアスケート連盟の副会長であるセルゲイ・コノニキヌイキンは、カザンで開催されたロシアグランプリシリーズの第4ステージが始まる前は、彼女たちのキャリア中断の決断で技術が単純化したことには気づかなかったと語った。彼の意見では、それどころか、複雑な内容だけでなく、スケーティングの全体的な質への取り組みも見られるという。これが第二の採点だ。現実には、アデリア・ペトロシアンだけが女子シングルを完全な崩壊から救っているという。彼女は明らかに最適な状態にはなく、彼女の豊富なジャンプのレパートリーのうち、4回転フリップとトリプルアクセルしか披露していない。この2つのジャンプは1度だけ成功したが、他のロシアのフィギュアスケーターは誰もこのようなジャンプをやっていなかった。
ロシアでの2つのウルトラシージャンプが海外でなされた2つのウルトラシージャンプとなった
オムスクでは、CSKAに所属する15歳のマリア・パラモノワが4回転サルコウに挑戦したが、失敗した。カザンでは、アリーナ・ゴルバチョワ、ダリア・サドコワ、オリンピックチャンピオンのカミラ・ワリエワの3人が4回転サルコウに挑戦した。しかし、結果は全員同じ。明らかに回転不足で転倒となった。ゴルバチョワとワリエワの不調は、緊張した感情的な背景やスポーツとは直接関係のない問題で説明できるとしても、エテリ・トゥトベリーゼの下にいる若いスターがたったひとつのウルトラシージャンプもできない理由は不明だ。もちろん、ソフィア・アカチエワの活躍はまだ見ていない。しかし、数ヶ月の欠場を余儀なくされた怪我明けの彼女が、出てきてすぐに4回転をやれると本気で期待する人がいるだろうか?
ISU国際大会「グランプリ・シリーズ」では、4回転とトリプルアクセルが披露され、まさに対等な競技が繰り広げられた。そして、どちらのジャンプも非常に予想外のものだった。ホーム大会でトリプルアクセルを披露したのはアンバー・グレン。彼女は24歳でこのエレメンツを初めて成功させた。彼女のキャリアはもう終わりに向かっていて、ネイサン・チェンとのロマンチックな関係だけが彼女の重要な事実であると思われていた時期に決めたのだった。住吉りをんは、日本のフィギュアスケートの熱心なファンでさえ彼女を知らなかったと思われていたが、その住吉が4回転トゥループを成功させた。彼女は、20歳という 『最高年 』で4回転を跳んだというユニークな事を成し遂げた。それ以前の『最高年』は、カザフスタンのシングル選手、エリザヴェート・トゥルシンバエワで、それは2019年の世界選手権の時で19歳だった。もちろん、エリザベータ・トゥクタミシェワもいるが、このサンクトペテルブルクの女帝は大会の演技中にクリーンな4回転トゥループを着氷することはなかった。
次の世代はもっと長く待たなければならないだろう
というわけで、もはやロシア人女子シングルが外国人女子に対して優位であるという議論はもはや成り立たない。いや、もちろん、もしロシアの女子選手が国際大会に出場できるようになれば、おそらく入賞もするだろうし、優勝もするだろうが、それは戦いとなるのであって、私たちが慣れ親しんできたような無条件の優位ではなくなるだろう。そして、カザンでの大会が少なくとも平均的な質のレベルを示していたとしても、クラスノヤルスク大会の女子シングルの試合を前の時代を懐かしみながら見るのは難しかった。アンナ・フロロワには失礼だが、少し前ならトップ3に入るチャンスはなかっただろう。しかし、今や彼女はメダル候補であり、ロシア選手権にも出場している。なぜなら、彼女のライバルにはもはや強力な技術的要素はなく、また、コンポーネンツの面でも、フロロワは多くの元4回転ジャンパー達に勝るとみなされるだろう。
重要なのは、現在の状況が異常なのではなく、目に見えて明らかな傾向であるということだ。昨年も孤立したウルトラシーへの挑戦が見られた。「4回転の女王」アレクサンドラ・トゥルソワでさえそれを断念し、その後、まあおそらく一時的にだが、この競技から引退することを決めた。4回転が減るとともに、ロシアの女子シングルは、人々を競技に惹きつけるような輝かしい名前を失いつつある。もちろん、世代交代やオリンピック後の困難な状況、国際的な孤立による疲労といった客観的な要因もあるが。様々な怪我を経た後で、どんな動機があればシェルバコワがウファで開催される大会でメダルのために健康を害しても出ようとするだろうか?次の世代が出てくるまでには長く待たなければならないだろうから、シェルバコワやトゥルソワを待ったとしても事は簡単にはいかないだろう。新ルールでは、17歳であることでシニア選手とみなされる。ベロニカ・ジリナとマルガリータ・バジリュクは、トップレベルでそんなに長く活躍できるだろうか?
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